獣医の大罪

街に溢れる動物病院。その内情について。

獣医師の仕事。加計学園問題も交えて。

晴れて獣医師資格を取得すると、様々な仕事に就く獣医師が誕生します。その多岐にわたる仕事内容は以下のようなものです。

 

【診療系】

小動物診療→動物病院でペットの診療

産業動物診療→食用産業動物の診療、生産の手伝い。蜂も。

実験動物診療→研究施設での実験動物の診療

その他→競馬場、水族館、動物園の動物診療

【公務員】

検疫→空港や港で輸入食品や動物の検査

屠畜検査→屠畜場で肉が流通できるかの検査

防疫→重大な家畜伝染病が起きないように監視したり、起きた際に対応する。

食品衛生監視→飲食店や販売店の衛生監視

環境衛生監視→銭湯、プール、火葬場など伝染病が起こりうる場所の衛生監視

薬事監視→病院や美容院で適切に医薬品が使用、管理されているか監視

動物保護→いわゆる保健所の職員

犬の登録→狂犬病予防の流通・啓蒙も兼ねる

行政関連業務→官僚、都道府県職員の仕事に準ずる

【一般企業】

研究→製薬会社や食品会社で薬や飼料の研究を行う

【教員】

教育関連業務→大学や専門学校で教鞭をとる

【その他】

免許を必要としない仕事に就く。YouTuberなど。

 

一部重複していますが、書いているとウンザリするくらいに獣医師免許を持っているだけで出来る仕事がたくさんあります。だいたい半分弱が小動物臨床医として動物病院に就職します。

 

今年、加計学園問題で閉会中審査の際に前愛媛県知事の加戸守行さんが必要性を訴えていたのは、公務員の中の防疫にかかわる獣医師のことです。

 

 子供の夢で挙げられる獣医師は完全にペットのお医者さんでしょうが、他にもたくさん仕事があるのです。これが全然知られてなくて、しかもなんとなく華やかじゃなさそうな仕事内容だけに、「動物のお医者さんはしんどいな、でも他の仕事も夢がないし、一般企業に入ろうかな」みたいな考えになってしまう学生も多いのではないでしょうか。これでは公務員獣医師は増えません。

 

先日の国会で、自民党議員から文科省に対して「医師の自治医大のように、獣医師にも大学卒業後にある程度の職業強制を課す大学があっても良いのではないか」という質問があって、これは僕がずっと考えていたことだったので大変感銘を受けた質問でした。

 

これに対する国の回答は「産業動物獣医師修学資金を増加したことで、今後は産業動物や地域の公衆衛生に関わる獣医師の増加が見込まれる」というものでした。産業動物獣医師修学資金とは、上記の仕事に就くことが確約できる人には毎月の給料とは別に国がお金をあげます(最大で月18万円)という制度の資金です。対象者はこの制度を利用する前提で大学入学試験を受けた者(地域枠入学者)もしくは在学中に申請した者です。

 

では、毎年何名の人がこの制度を利用するでしょう。まず、地域枠入学者は全国的に見てほとんどいませんし、大学側も入学者として設定していないに等しい扱いです(参考サイトhttp://jlia.lin.gr.jp/eisei/syugaku/selection_standard.pdf)。結局、「産業動物獣医師になりたいけど毎月の給料面を考えると厳しいから他の仕事にしよう」という人を対象にした制度だと思われるのですが、はっきり言ってそんな人はほとんどいないでしょう。少なくとも、各都道府県に毎年1人以上送り込めるほどの応募は無いと思います。なぜなら、学生のほとんどが犬や猫を治してあげたいと思って入学してくるからです。

 

ちなみに上記のサイトの一番下に書いてある、日本獣医生命科学大学の獣医師後継者育成枠はただちに撤廃して欲しい枠です。親が獣医師であれば入学のチャンスが増えるなんて、不人気の学部ならいざ知らず、毎年努力しても合格に手が届かない高校生や浪人生のことを考えると裏口入学に近い制度です。

 

話は長くなりましたが、どうぶつのお医者さんは獣医師の仕事のほんの一握りです。この辺りのことがこれから獣医大学に入ろうとする高校生や、その家族の方に浸透して来ると、多少状況は改善するのかもしれません。

 

獣医師とは

獣医師(日本)とは、農林水産省から認定され、獣医師免許を有する人であり、以下の3点への寄与を使命とします。

 

①動物の保健衛生

②畜産業の発展

③公衆衛生の向上

 

僕たち小動物臨床医は主に①に尽くしていると思われます。一部では、感染症の治療など③に寄与していることもあります。

 

獣医師になるには、一部例外もありますが、以下の大学に入学して卒業し、獣医師国家試験に合格する必要があります。全て6年制大学なので、最短で卒業しても24歳で社会に出ることになります。

 

【国公立大】

北海道大、帯広畜産大、岩手大、東京大、東京農工大、岐阜大、大阪府立大、鳥取大、山口大、宮崎大、鹿児島大

 

【私立大】

酪農学園大、北里大、日本獣医生命科学大、麻布大、日本大、岡山理大

 

ここを通らずに免許を得るには海外の獣医大を卒業する必要があり、ほとんどの方は逆にハードルが高くなってしまうと思います。

また、大学により異なりますが、他学部を修了した人は学士入学(2年生か3年生から入れる)という制度があることがあります。

 

毎年約1000人が国家試験に合格し、晴れて獣医師となります。

獣医の大罪

はじめまして、今回が記念すべき初回になります。僕は臨床獣医師として、日々ペットの犬や猫を診察しています。この仕事を始めてだいたい10年が経ちました。

 

このブログは、ペット医療の現状について書いていくブログです。よって、産業動物や実験動物、食品・衛生関連の獣医師の仕事は扱いません。僕がこのブログを書こうと思った原因はズバリ…

 

加計学園

 

です。

 

前々からペット医療の惨状については疑問に思っていました。もうほとんどメディアに取り上げられなくなりましたが、2017年に大きな話題となってしまった加計学園問題の中で、「ペットを診る獣医さんはたくさんいるんだけど、公務員の獣医師が足りない」といった意見を目にすることが増えました。

 

その指摘は正しいのですが、実際にペット獣医師の数が足りているからこの業界で質の良いサービスが提供出来ているかというと、それは確実にNO、です。世の中には動物病院側の至らなさによって泣きを見る飼い主とペットがたくさんいるのです。そして、そこまで突っ込んでくるメディアや記者はいません。

 

個人的に尊敬している虎◯門ニュースに出演しているジャーナリストや政治家の方々でもこんなニッチな世界までは踏み込む暇が無さそうなので、微力ながらブログで綴ることにしました。

 

なるべく分かりやすくペット医療業界について説明していけたらと思っていますので、よろしくお願いします。